本記事では、Salesforce純正のMA(Marketing Cloud Account Engagement)で完結させる選択肢と、メールやLINEに強みを持つサードパーティMAを連携させる選択肢を整理し、自社に合うMA選びの判断材料をまとめていきます。
「メール中心で育成すべきか、LINE中心で再来店や再購入を狙うべきか」
「Salesforceは使っているが、何を基準に選べばいいか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では比較の軸、業種別の考え方、メール系3選とLINE系2選の特徴をまとめました。EC・小売・アパレル・人材・会員ビジネスまで、自社に合う方向性を判断したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
まず全体像を整理しましょう
新規獲得後の長期育成や営業連携が中心ならメール配信型、再購入・来店促進・会員活性化を重視するならLINE配信型が候補になりやすくなります。
「Salesforce MAツール」と一口にいっても、Salesforce純正のMAと、Salesforceと連携できるサードパーティMAでは得意なコミュニケーション手段が異なります。
メールを軸に見込み顧客を育成するタイプもあれば、LINEで友だちごとに配信を出し分けてCVや売上改善を狙うタイプも。
BtoC企業では、Salesforceにある顧客情報をどのチャネルにどう活かすかで、向いているツールが変わってきます。
- まず確認したいのは、自社の主戦場が「資料請求後の育成」か「購入・来店後の再アプローチ」か
- 次に、Salesforceにある顧客属性・購買履歴・会員情報を、配信条件にどこまで使いたいか
- 最後に、配信設計を社内で回すのか、CSや運用支援を活用したいのかを整理する
| 項目 | 概要 | 向いているケース |
|---|---|---|
| メール配信型 | フォーム、リード管理、スコアリング、ステップメール、営業連携を軸にしたMA。Salesforce上の商談・リード管理と相性がよい傾向 | BtoB、人材、資料請求後のナーチャリング、営業部門との連携を重視する企業 |
| LINE配信型 | LINE友だちごとの属性、行動、ID連携情報を活かし、セグメント配信やシナリオ配信を行うタイプ | EC・通販、店舗、小売、アパレル、会員ビジネスなど、再来店や再購入を重視する企業 |
| LINE公式アカウント単体 | 基本的な配信やチャットはできるが、外部データ連携や高度な自動化は限定的 | まずは小規模に始めたい企業、配信量やシナリオ数が多くない企業 |
| LINE拡張ツール | 顧客データ連携、ID連携、シナリオ分岐、アンケート、行動連動配信などを強化できる | 友だち数が増え、One to One配信やCRM連動を本格化したい企業 |
MAツールとメール配信ツールの違い
メール配信ツールは「送ること」が中心ですが、MAツールは「誰に・いつ・何を・どの条件で送るか」まで含めて設計できる仕組みです。
Salesforce連携を前提にする場合は、配信結果を営業活動や商談管理にどう返すかが重要になります。
Salesforce公式でも、Marketing Cloud Account EngagementはCRM上で顧客データを統合し、マーケティングと営業の連携を強めるBtoBマーケティングオートメーションとして位置づけられています。
出典:Salesforce公式
LINE公式アカウント単体と拡張ツールの違い
LINE公式アカウント単体でも配信はできますが、BtoCで成果を出すには、購入履歴や会員ID、閲覧履歴を活かした配信設計が重要です。
LINEは国内月間利用者数1億人以上(2025年12月末時点、LINEヤフー株式会社発表)、メッセージの平均開封率は約55%(2022年6月 LINEヤフー株式会社調べ)。一方で平均ブロック率は約36%というデータもあり、一斉配信よりもセグメント配信やID連携の精度が成果を左右します。
出典:LINEヤフー株式会社/LINEヤフー for Business公式note
Salesforce連携可能なMAツールを選ぶ前に整理しておきたいこと
機能比較に入る前に、自社の状況を整理しておくと選定の迷いが減ります。
「Salesforceの中のどのデータを使うか」
「LINEとメールのどちらを主戦場にするか」
「運用体制はどう組むか」の順に確認していきましょう。
- Salesforceに入っている使いたいデータ項目(リード・商談・カスタムオブジェクト・購買履歴など)
- 主要KPI(商談化率・CV率・再購入率・LTV・ブロック率など)
- 月間配信量とシナリオ数
- 運用担当者の人数とスキルセット
この4点を整理しておくと、機能差や料金体系を比較した時に何を優先すべきかがクリアになります。
逆に、ここが曖昧なまま機能比較に入ると
「機能は豊富だが運用しきれない」
「Salesforce連携はできるが自社が使いたいデータが連携できない」というミスマッチが起きやすくなりがちです。
比較・判断基準はこの5つです
機能数の多さよりも「どの業務を短くできるか」で見ると判断しやすくなります。
BtoC企業の現場では、セグメント配信、ID連携、行動連動配信、かご落ち対策、サポート体制の5点が特に重要です。
- 配信対象を細かく分けられるか。年齢や地域だけでなく、購入履歴や会員ステータスまで使えるか
- Salesforceや自社会員基盤とのID連携が現実的か。運用負荷が高すぎないか
- 資料請求後フォロー、かご落ち、再購入促進など、行動に応じた自動配信が組めるか
- 導入後に社内で回せるか。CS支援や初期設定支援があるか
- 配信結果がSalesforce側にも反映され、営業や他部門の意思決定に活かせるか
| 比較軸 | メール配信型 | LINE配信型 | 見るべきポイント |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | リード育成、営業連携、フォーム起点のナーチャリング | 再購入促進、来店促進、会員活性化、離脱防止 | 自社のKPIが商談化率なのか、CV・LTVなのかを先に決める |
| データ活用 | リード情報、商談情報、フォーム送信履歴 | 会員ID、購買履歴、閲覧履歴、アンケート、LINE上の行動 | Salesforceのどの項目を配信条件に使いたいかを整理する |
| シナリオ設計 | ステップメール、スコアリング、営業通知 | カゴ落ち、再入荷、誕生日クーポン、来店リマインド | 「行動連動」の粒度が自社に合うかを見る |
| コストの考え方 | ライセンス費用が中心になり、詳細は要問い合わせが多い | ツール費用に加え、LINE公式アカウントの通数設計も必要 | 初期費用だけでなく、月次の配信量と運用工数で判断する |
| 運用体制 | 営業・マーケ部門の連携が必要 | EC・CRM・店舗運営との連携が必要 | 社内で誰が配信設計を持つかまで確認する |
なお、LINE公式アカウントの料金プランは、コミュニケーションプラン月額0円・月200通、ライトプラン月額5,000円・月5,000通、スタンダードプラン月額15,000円・月30,000通が基本で、追加メッセージはスタンダードプランのみ利用できます。
LINE系ツールを比較する際は、ツール料金だけでなく、LINE公式アカウント側の通数設計も含めて総コストを考えることが大切です。
出典:LINEヤフー for Business
ケース別に見る、Salesforce連携を検討しやすいメール系3選・LINE系2選
ここでは「どれが一番優れているか」ではなく、どんな企業に向いているかという観点で整理します。
BtoC企業でも、問い合わせ前の比較材料として十分使えるようにまとめました。なお、以下の番号は紹介順序であり、優劣のランキングではありません。
| ケース | 向いている選択 | 理由 |
|---|---|---|
| EC・通販企業 | LINE配信型 | かご落ち対策、再購入促進、会員ID連携、商品閲覧や購買履歴を使った出し分けと相性がよい |
| 店舗型ビジネス | LINE配信型 | クーポン配信、来店促進、予約リマインドなど、即時性が求められる施策を動かしやすい |
| BtoB企業 | メール配信型 | 資料請求後の育成、スコアリング、営業通知、商談化までのプロセス管理に向く |
| 会員ビジネス | LINE配信型または併用 | 会員ランク、誕生日、休眠判定など、CRMデータを活かした継続接点づくりがしやすい |
- 最初に、売上を伸ばしたい接点が「メール」か「LINE」かを決める
- 次に、Salesforce内のどのデータを配信条件に使いたいかを明確にする
- 最後に、社内運用で回すのか、初期設計や改善支援まで必要かを判断する
メール系3選
1. Salesforceそのもので完結する選択肢(純正MA)
サードパーティMAを比較する前に、まず押さえておきたいのが「Salesforce純正のMA(Marketing Cloud Account Engagement)で完結させる選択肢」です。
すでにSalesforceを軸に営業・マーケティング・カスタマーサポートを動かしている企業なら、別ツールを挟まずに完結させることで運用面・データ面のメリットを得やすくなります。
一方でBtoC向けの販促や、LINEを主軸にしたい場合には注意点も出てきます。
| 観点 | 純正で完結するメリット | 純正で完結する注意点 |
|---|---|---|
| データ管理 | 営業・マーケ・サポート情報を1つのプラットフォームで一元管理でき、データ重複や連携工数が発生しない | BtoC特有の購買・行動データを扱うには、別途設計やオブジェクト拡張が必要になりやすい |
| 運用体制 | サードパーティ連携の保守・障害対応が不要。権限管理やセキュリティポリシーを統一できる | 機能が豊富な分、設定や運用に学習コストがかかり、専任担当者が必要になることも多い |
| 得意領域 | BtoBのリード育成・スコアリング・営業連携・長期ナーチャリングに最適化されている | ECの再購入促進や店舗送客、LINEを主軸にした販促には機能が不足しがち |
| コスト | Salesforce契約内で完結させやすく、ベンダー数を増やさずに済む | 純正ライセンスは料金水準が比較的高めで、小規模運用だと機能を持て余す可能性がある |
つまり、BtoBで営業連携を重視するなら純正MAで完結する選択肢が最有力になり、BtoCでLINEや行動連動配信まで広げたいならサードパーティMAとの組み合わせを検討するのが現実的です。
次に紹介するのは、Salesforceと連携できるサードパーティのメール系MA2選です。
2. HubSpot
HubSpotは、Salesforceとの高速かつ信頼性の高い連携を前面に打ち出しており、技術的な準備を抑えつつマーケティングと営業の情報をそろえたい企業に向きます。
世界140か国以上で導入されており、Marketing HubではEメール配信、リードスコアリング、ランディングページ作成、ワークフロー自動化、ブログ・SNS管理などをオールインワンで利用できます。
一方で、LINE主軸のCRM施策や会員アプリ代替まで視野に入る場合は、LINE拡張ツールとの併用を前提にしたほうが現実的です。
出典:HubSpot公式
3. Synergy!LEAD
すでにSalesforceを業務の中心に置いていて、日本語で扱いやすいメール運用を重視したい企業ではSynergy!LEADが有力候補になります。
Salesforceの画面から別ログインなしでメール配信でき、メールアドレスを持つオブジェクトへ柔軟に配信できます。
メール配信のみなら月額30,000円からという情報も公開されており、Salesforce内で配信業務を完結させたい企業に相性のよい選択肢になります。
「メール配信 使ったときだけプラン」も用意されており、配信頻度が一定でない企業でも導入しやすい設計です。
出典:Synergy!LEAD公式
| 選択肢/ツール名 | 主な強み | 向いている企業 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| Salesforce純正で完結 | 営業・マーケ情報を一元管理でき、サードパーティ連携の保守工数が不要 | BtoB、人材、長期ナーチャリング、Salesforceをすでに軸にしている企業 | BtoC販促・LINE主軸の運用には機能不足になりやすい |
| HubSpot | マーケと営業の情報統合がしやすく、運用の立ち上がりが比較的スムーズ | コンテンツ活用や営業連携を含めて広くマーケ運用したい企業 | LINE主軸のCRM施策は別ツール併用の検討が必要になりやすい |
| Synergy!LEAD | Salesforce上でメール配信を完結しやすく、日本語環境で扱いやすい | Salesforceを中心にメール配信を効率化したい企業 | LINEを主戦場にする施策には別途検討が必要 |
LINE系2選
4. Ligla
Liglaは、LINE特化型のマーケティングオートメーションとして、EC・小売・アパレル・会員ビジネスのようにLINEを主軸にCVや売上改善を進めたい企業で検討しやすいサービスです。
東証プライム上場のブレインパッドグループ(株式会社TimeTechnologies)が提供しており、Rtoasterのロジックを活用したレコメンドエンジンを搭載しています。
会員IDとLINE IDの紐づけ、会員情報の連携、外部で作成したセグメントの自動連携に対応しており、購買履歴や属性に応じたOne to One配信に向く設計です。
運用面では、ノーコードで操作可能で専任エンジニア不要、月間50万通まで無料の独自配信枠(LINE公式アカウントの無料通数とは別枠)、導入から配信開始まで約8週間というスピード感も特徴のひとつ。
会員IDを連携した顧客のLTVが、非ID連携者と比較して平均1.8倍に向上したというデータ(Ligla調査)もあります。
Salesforceを含むCRM側の会員・顧客データをLINE施策に活かしたいBtoC企業では、具体的な連携要件を確認しながら比較候補に入れやすい選択肢になります。
5. Liny for Salesforce
Liny for Salesforceは、SalesforceとLINE公式アカウントをノーコードでつなぎたい企業に向きます。
2025年12月にSalesforce AppExchangeで提供開始されたアプリで、開発不要でSalesforceとLINE公式アカウントのデータを自動連携できます。
Salesforce上の取引先情報・ユーザー情報・活動履歴・契約情報をLINE側にタグや友だち情報として連携でき、Linyで取得した行動・回答データをSalesforceへ蓄積し、顧客属性や商談フェーズに応じた配信・対応を実行できます。
データ連携には、メールアドレス・電話番号・会員番号・UIDなどのマッチングキーが必要な点は事前に確認しておきたいポイントです。
| ツール名 | 主な強み | 向いている企業 | 注意したい点 |
|---|---|---|---|
| Ligla | LINE特化で、会員ID連携・購買履歴活用・かご落ち対策・再購入促進に強みを発揮。Rtoasterのロジック活用 | EC・通販・小売・アパレル・会員ビジネスなどBtoC企業 | 詳細な連携要件や料金は事前確認が必要 |
| Liny for Salesforce | SalesforceとLINE公式アカウントのノーコード連携を進めやすい | すでにSalesforceを使っていて、開発負荷を抑えてLINE運用を強化したい企業 | マッチングキーの設計や活用範囲は自社の運用体制に合わせた確認が必要 |
導入後の運用で見るべきチェックポイント
導入後にどのKPIを追うかを先に決めておくと、改善サイクルが回しやすくなります。
比較段階で「何を改善したいか」をクリアにしておくと、ツールが過剰機能に振れすぎる事態も防ぎやすくなるはずです。
- 配信ごとの開封率・クリック率・CV率の推移
- セグメントごとの反応差(年代・購買頻度・会員ランクなど)
- 配信頻度とブロック率の関係
- Salesforce上の商談ステージ移行率と配信タイミングの相関
初期設計が決まったあとも、月次レビューで指標を見直す習慣をつけると改善が回しやすくなります。
MAツールは導入して終わりではなく、改善サイクルの設計まで含めて選定するのが現実的な進め方になります。
結局どう選べばいいのか
迷ったときは、製品名から入るより「どの顧客接点を改善したいか」から逆算するのが近道。
Salesforce連携は前提条件であり、成果を出すにはチャネルの選び方が重要になります。
- 資料請求後の育成や営業連携が重要なら、まずはメール配信型を優先する
- EC・店舗・会員施策で再購入や来店促進を狙うなら、LINE配信型を優先する
- Salesforceの顧客情報を細かく配信条件に使いたいなら、ID連携や外部データ連携の仕様を必ず確認する
- 一斉配信のしやすさではなく、セグメント配信とシナリオ配信の現実的な運用負荷で比較する
LINEを主軸にCVや売上改善を進めたい企業は、Salesforce連携の有無だけでなく、会員ID連携・行動連動・CS支援まで含めて比較することが大切です。
Salesforce MAツールに関するよくある質問
Salesforceと連携できれば、どのMAツールを選んでも大きな差はありませんか
いいえ、差はあります。Salesforce連携はスタート地点にすぎず、メール中心なのかLINE中心なのか、どのデータを配信に使えるのか、現場でどれだけ運用しやすいかで成果は変わります。
連携の方式(ネイティブ・API・iPaaS経由など)や、双方向同期の対応範囲もツールごとに違うため、技術仕様の確認は欠かせません。
LINE公式アカウントだけでも十分ですか
配信量が少なく、シンプルな運用なら十分な場合もあります。
会員ID連携、詳細なセグメント配信、かご落ち対策、アンケート起点の分岐配信まで求める場合は、拡張ツールを検討したほうが運用しやすくなります。
EC企業ではメールとLINEのどちらを優先すべきですか
新規会員登録後の継続接点や再購入促進、クーポン活用を重視するならLINEが優先候補になります。
一方で、会員獲得前のリード育成や長文コンテンツの案内が多い場合はメールも有効です。多くのECでは併用前提で、どちらを主軸にするかを決める考え方が現実的でしょう。
既にSalesforceを使っているなら、純正ツールを選ぶべきですか
必ずしもそうではありません。営業連携を最優先するなら純正系は有力ですが、店舗集客や会員アプリ代替、LINEでの接客強化を重視する企業では、LINE特化型ツールのほうが使いやすいこともあります。
自社の主戦場と既存資産のバランスで判断するのが安全です。
問い合わせ前に最低限整理しておくべきことは何ですか
主なKPI、Salesforceにある使いたいデータ項目、配信したいシナリオ、月間配信量、運用担当者の5点。ここが曖昧なままだと、機能比較をしても判断しづらくなります。可能であれば、現状の配信フローをホワイトボードに描き出し、どこに自動化のメリットがあるかをチームで共有しておくとスムーズです。
次の記事ではLINE配信ツールのおすすめを紹介
ここまで読んで「メールよりも、やはりLINE施策を強化したい」と感じた方は、次の記事もあわせてご覧ください。
LINE配信ツールを比較するときの見方を、より実務に寄せて整理しています。